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【読者企画】My Book Picks 日本を動かす「100の行動」 堀義人さんなど同志が語る

本記事は去る2月28日、グロービス大阪校で開催された出版記念セミナーでの講演内容を基にしています。当日の登壇者及び略歴は以下の通りです。(50音順)

■秋山 咲恵さん
奈良市出身、京都大学部法学部卒。1994年にサキ・コーポレーションを創業し代表取締役社長に就任。2003年に小泉純一郎の政府税制調査会の委員に就任し、2005年には日刊工業新聞から最優秀経営者賞を受賞。現政権では産業競争力会議で委員として参加(現在は退任)

■堀 義人さん
茨城県生まれ。京都大学工学部卒。住友商事株式会社を経て1992年株式会社グロービス設立。
2008年に日本版ダボス会議である「G1サミット」を創設し、2013年4月に一般社団法人G1サミットの代表理事に就任。

■御立 尚資さん
兵庫県生まれ。京都大学文学部卒。93年、ボストン コンサルティング グループ(BCG)入社。99年、ヴァイス・プレジデント。2005年、日本代表。06年、BCGグローバル全体の経営判断を行う経営会議メンバーに日本人として初めて選任。

 

八年間かけて描いたビジョン

:100の行動に至るまでの経緯を簡単に説明します。

 海外留学から帰国する時、これからの日本に何が必要か、人・金・知恵という世の三元素から考えてみました。今後は知識集約型産業の時代になる。そのためにはまずベンチャーが要る。ベンチャーが起業する機会を創るためにはビジネススクールが要る。資金が要る。そして知恵を発信するところも必要だと考えました。(筆者注記:それぞれ該当する事業を堀さんは立ち上げています。)

 1年後に資本金80万円でグロービスを立ち上げました。大学院で人材を育成し、ベンチャーキャピタルで投資をしていきました。そして日本を動かすリーダーたちを集めようと考え、同世代の政治家・財界人・学者に集まって頂く場をG1サミットと命名し作りました。ビリオネアになった方を含めて40名くらいになるでしょうか。最初、政治家で大臣経験者は皆無でしたが、今や10名以上になります。さらに内閣総理大臣(阿倍晋三氏)もノーベル賞受賞者(山中伸弥氏)も出現するなど、ここ数年目覚ましい活躍ぶりです。そんな彼らと日本をどういう方向にもっていくかビジョンを描いてみました。

 事業を運営する時、ビジョンがないと閉塞感に覆われて暗澹たる思いになりがちなので、ビジョンが重要だと考えています。そして8年かけてビジョンを描きました。これを制作していて思いました。日本の将来は明るくできる。ただ、自分たちが明るくするという自覚が要ります。政治家でないということは未来に責任を負わないということと同じではありません。リーダーが集まり、声を上げて議論をする、それで世の中が変わっていくものだと考えています。書いてあるものを読んで頂くと分かりますが、簡単なものは既に実行されています。残されたものは強硬な抵抗勢力が存在するためにタブー視されがちなものです。強力な利益団体が抵抗しますが、日本全体のことを考えて声をあげていくべきだと考えています。

 

農業改革に見る成功のポイント

秋山:G1サミットに第1回からずっと参加しています。日本が変わろうとしている事例を紹介します。(筆者注記:秋山さんが参加していた)産業競争会議での話です。

 100の行動の44番に農業を成長産業にするという箇所があります。事業として農業を捉える。農地を使って農産物という商品を沢山生み出し、国内だけでなく海外にも売りたい。まだまだ成長できる余地があります。日本は人口が減っていますが、世界中では増えているからニーズが高まります。

 一方で農地を所有できるのは農業生産法人のみです。法人と言う一方、なれる人は農業を主たる業務にしている人のみに限られています。これは農地法という昭和27年に出来た法律に基づいているためです。しかし、法律制定時の前提としている社会環境が今は違っています。あまりにも長い時代、この状態が続いたために利害関係者が沢山いて急激に変えづらくなりました。株式会社が参入できるように条件を変えようとしても非常に沢山のエネルギーを要し、これが規制になっています。農業は土地の改良に時間がかかります。耕作放棄地は元に戻しづらいのが実情です。株式会社だと耕作を放棄したり他の目的に転用したりする恐れがあるから反対である。というのが主たる反対論です。

 この現状に兵庫県養父市(人口2万5千人)の市長が改革しようと思い立ちました。地域を守るため、制度改革特区の適用を受けることにしたのです。地元で取り組み、リスクやメリットを検証する。ことにしたのです。ここでポイントが5つありました。

・市長というリーダー、そしてリーダーシップがあった。
・国家戦略特区という活躍できる場を作ってリーダーが活躍できる場を作った。
・周辺に支援するサポーターを生んだ。(サポーターがいないと孤軍奮闘になってしまう)
・机上の空論から脱するために条例を整備してリスク回避のための仕組みを作った。市長が自分で出来ることはすべて用意した。
・長期安定政権があった。(そうでないと時間とエネルギーのかかる改革はなかなかできない)

 

関西はおもろいことをしなければ

御立:関西はおもろい(面白い)ことをしないといけないと考えています。

 前原誠司さんが国土交通省の大臣だった時、航空行政で羽田空港の国際化、大阪空港(伊丹)と関西空港の一体化、LCCの導入が進みました。

 改革派の官僚は全体の3割くらいいます。彼らと法律を変えて予算を通そうと思いました。関西空港には1兆2千億円もの借金がありました。しかし営業利益率が高いのです。借金が多いがために利払いが大変で悪いイメージがあるが、滑走路・空港設備・周辺の地域をまとめて一体経営していて、羽田空港より儲かっているくらいです。

 民間が経営できるようにしたい。それには大阪空港(伊丹)と一体化しないといけない。しかしそれにはLCCがないと儲からないのでピーチ・アビエーションを呼ぼうと考えました。同社を誘致しようとすると、スポット(飛行機が駐機する場所)の配置換えが必要ということになり、追加の予算が必要になったところ、改革派官僚が動き無事できました。こうした積み重ねで地方に観光客が行きやすくなったと言えます。

この件を振り返るに、物事を進めるためには
・政治のリーダーシップ
・民間の商売感覚
・法律を変える改革派の官僚
に加え、様々な人が興味を持つことが必要だと考えるようになりました。官僚は世論の関心がないと誰も興味を抱いていないのではないかと考え、前向きに進めたがらないからです。そうしないためには皆で議論するための基礎知識が要ります。もし意見が違っていたら話し合ったらいい訳です。

 

一人当たりGDPアップを考えたい

御立:皆で一人当たりGDPを上げることについて考えてみましょう。バブルのころ日本の一人当たりGDPは38,000ドル~40,000ドル程度でした。ちなみに私が生まれた1957年は3,000ドルで今の中国より低かったくらいです。

 その後約20年、この数値はあまり伸びていません。バブルの頃は西欧先進国と同じくらいだったのに日本だけ置いていかれました。現在、スイスは約70,000ドル、北欧諸国は約60,000ドル、英独仏は55,000ドル以上、バブルの頃、日本の半分くらいだったシンガポールは56,000ドルとことごとく差をつけられました。

 GDPを上げるためにどうしたらいいか考えてみましょう。これからの成長分野であるヘルスケア・医療介護。ここは生産性が低く年収200万円くらい。もう一つの成長産業である観光業は平均年収が100万円台です。これでは日本の景気が良くなるわけがありません。生産性を上げるためにどうしたらいいか。あきらめないで考えて世の中に日本が開発した仕組みを売るようになったらいいと考えています。(筆者注記:後ほどこの続編の話が出てきます)

 

民間人として何ができるか

(筆者注記:以下登壇者3名によるパネルディスカッションになりました。その概要を以下にまとめます。)

 民間人が政治プロセスにどう関わっていくかといいでしょうか。

 まず政治家に関して。
政治家は選挙で選ばれています。彼らが政治について語る時、聴衆には高齢者が多い。これだと社会保障改革を言いづらいのが実情です。

 次に官僚に関して。
官僚は基本的には法律に従って運用するのが任務です。今と違うことを運用するのは難しいのが実情です。

 そして民間人。
もっとよくなるということをストレートに意見を発信できるのが民間人の良さです。

 官僚が法律を変える際には細かい過去の経緯を手繰り寄せます。それこそペルシャ絨毯ほど分厚い編物の中を手繰り寄せるように確認するので、法律の専門家でないと変えようと言っても簡単に変えられる訳ではありません。そこで改革派の官僚が法律を変えられるように後押しをする必要があります。

 次に変えようとすると政治の意思決定プロセスを理解する必要がある。その難しさというと、世の中伸びている時はパイを配分するのみで済むので結構実施しやすい。一方、世の中伸びていない場合には痛みとリスクの配分になるので実に決めづらいのです。一部に痛い思いをする存在が出てくる。その数と声の多さに意識がいきがちです。ここで「いいな!」と思う政治家は応援しないと利益団体に押され、利益団体の言うことしか聞かなくなってしまいます。「いいな!」と思う政治家を見つけて自分の意見をぶつけて議論をすることで理解を深めていくといいと思います。

 政治家も簡単には物事を変えられません。まず野党だとパワーが足りません、与党でも簡単ではない。それこそ官僚に理解してもらう。族議員に理解してもらう。そして利益団体がいる。与党・野党がいる国会がある、世論がありマスコミが見ている。様々な合意・検証プロセスがあります。ということで改革は一筋縄では進みません。

 そこで一足飛びに全て解決とはいかないので第1ステップとしてひとまず行けるところまで行ってみようということがあります。ところがそれを見て改革が後退したかのようにマスコミに叩かれる。当事者のストーリーの中では進んできたのにマスコミが叩くと改革派にとって逆風になってしまいかねません。そうしないようにするため基礎知識として、興味がある点に関しては詳しく理解することで誤解に基づく逆風を吹かせないようにできるのではないかと考えています。

 関心を持って発言をすること。改革を起こそうとすると、よくノイジーマイノリティーばかりが声をあげがちです。消費税の軽減税率の議論の際も特定の存在だけが声高に軽減するよう主張しました。一方サイレントマジョリティーはメリットが小さいので声をあまりあげないようになりがちです。だからこそサイレントマジョリティーが声をあげやすくなるようにするべきです。そうするためには民間人の行動、危機意識、学ぶことが重要です。

 この本(筆者補足:日本を動かす「100の行動」のこと)には政治家が関与していません。民間人が考えてよいと思ったことをまとめています。本を通じて学んでほしい。批判したいところがあれば批判するだけだと生産性がないので提案をしてほしいし行動してほしい。

 国は1,000兆円近い借金を抱えてしまいました。そうなってきた以上、今までから変えていかないといけません。政治家だけでなく民間人もリーダーとしての自覚をもって変えていかないと子供たちの世代に悪い日本を残してしまいます。「誰かがやってくれるだろう」ではなく僕たちがやるんだ!という自覚をもって発信し投票することが重要です。

 経済界が出来ることについて、自分(御立さん)が会員でもある経済同友会を通じて話してみます。経済同友会は70年前に発足しました。敗戦の焼け野原の中、明るく言いたいことを言ってやるべきことをやろうということが憲章になっています。そのため企業としてではなく個人として参加することになっています。たとえ自分のいる会社や業界にとっては都合の悪いことであっても言わないと馬鹿にされかねません。自分の会社や業界にとってマイナスになることであっても言わない人間はリーダーにしないのです。そのため尖った意見を言う団体になっています。

 このため政界からすると、経済団体であれば本来ならこういうことを言ってほしいということを言っていると評価いただいています。こうして経済界の力を改革に近づけていけるものと考えています

生産性の向上

 日本では製造業における生産性が高いのにサービス業がと低いと言われています。これは構造的にやる気のある者が勝ちづらくなっているためであり、社会として変えていかないといけないと考えています。

 医療に関してだと、およそ50兆円のマーケットのうち、約40兆円が病院・介護施設のサービスです。そのため現場の生産性を上げることが求められています。問題としては経営を向上させるインセンティブがなかなか湧かないことではないかと考えています。大赤字になっても赤字を補填される公設の病院(市民病院等)に約1兆円のお金が流れているので、そこにいると生産性向上の意欲が湧きづらい、とマーケットが歪んでいるのです。

 また規制改革も重要です。それこそ今のロボットは人間と共存するようにまでは出来ていません。人間と考えながら働くロボットが出来上がるためには医療現場の協力が必要不可欠で医療機器としての認可が要ります。開発したプロトタイプを実稼働に持ち込むための作りこみをしようとしても規制の壁が厚く承認に至るまでのコストがかかり過ぎであり、それを変えていく必要があります。

 観光業に関して言うと、旅行消費は2006年に約30兆円ありました。最近外国人旅行者が増えたと言われていますがそれでも昨年の旅行消費額は約24兆円です。そもそも日本人が旅行していません。GW、お盆と年末年始にしか行かない。そうなるとその時期だけは努力しなくても宿泊施設は予約で埋まります。一方、それ以外の時期はあまり予約がないので不安定な雇用ばかりが増えてしまいます。よって休暇を分散させることで安定雇用を増やすようにした方がいいと考えています。諸外国の中には地域によって休日が違うところがあるので日本もそうしたらいいと思います。

 

今後の活動(単独インタビュー)

小室:今後、どのように活動していきますか。特に成果をどのように世の中に発信していきますか。

:政権の中にG1メンバーが様々な現政権での委員会に参加しています。産業競争力会議、規制改革会議、教育再生会議などにいます。そこでの発言で政権内での影響を行使していきたいと考えています。

 また、与野党の方々とピンポイントでプロジェクトを立ち上げて進めていくことも考えています。先日は被選挙権の引き下げで記者会見を行いました。

 官僚、政治家を通じて動かしていくことを考えています。

 さらにG1サミットでアジェンダを設定することを考えています。憲法改正、働き方改革、文化政策、教育政策、テクノロジー分野(人工知能等)において世の中で運動論として展開していきます。

 こうしたことを出版記念では全国5カ所でセミナーで説明していますが、セミナーを開催しないところでもでも運動論として展開していこうと考えています。最新の情報はWeb上で公開していきますので是非ご覧下さい。

Mr. Yoshito Hori

私がこの本を勧めたい理由

最後に私の話を書いてみようと思います。100の行動30番目(聖域なき歳出改革を!)の「2.政府調達の改革を!」にこういう一節があります。

各省庁による調達計画を策定・公表させ、毎年、外部評価を行う。

 私はここにある「調達計画」を最初に各府省が作成する際、有識者として各省庁のメンバーが参加する会議に3回出席し、それが縁で内閣府の担当部署で2年間任期付職員として働きました。

 一番最初に調達計画を策定しようとしている現場に入った時、事の重要性を痛感した一方で、現場は今までにないことを導入しようとしているため、困惑しきっている様子がはっきりと伝わってきましたし、一部メディアなどにはまるで改革が後退するかのように評され、孤立感すら感じたのを今でもよく覚えています。

 実際、計画の草案を各省庁が最初に発表する時、わずか1行しか内容を書かない省庁がいてどうなることかと思いましたし、一部週刊誌には業務改善の計画のはずが役所叩きのネタ帳のようにされかけ、立ち上げるに当たっての主旨と違うなど懇々と説明したのを覚えています。

 結局、関係者が強い絆で結ばれ、各省庁は無事計画を作成しその結果を運用するようになりましたが、まだ私の中では道半ば、さらに改良の余地があるとも感じています。調達業務をより改善していく、行政事業レビューとより連動させる等です。

 そういうこと思い起こすにつけ、何とか一部を成し遂げたものの、まだ道半ばで後進に譲った。彼らに託したとは言え、官公庁の感覚と民間の感覚と両方が要るという独特の難しさがあるため、後ろ髪を引かれるような思いがしていました。一民間人でも国のために貢献できる方法はないものかと思案していました。

 それだけに然るべき者が集まりこの国をどうしたらいいか考える場があることにより、現場の第一線にいる人は孤立感を味わうことがないでしょうし、現場の第一線にいない人でも、それぞれの立場から知恵を出し合うことで、より有意義な考えがまとまるといいなと思います。

日本を動かす「100の行動」の本を読む、この活動(G1サミット等)を応援する人が一人でも多く現れることを祈ります。

 

関連Webサイト

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100の行動 公式Webサイト

一般社団法人G1サミット

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プロフィール

小室

小室 勝裕
1972年生まれ。京都市在住。
10年来、購買業務のうち間接材の取引見直しによるコスト削減を様々な立場で経験。コンサルテイング会社勤務時代には事業を西日本に拡大するに当たっての現場の最前線を背負う。事業企画、経営企画、そして内閣府に出向して国の制度改革にも貢献した後、製薬会社に転職、現在に至る。
週末は二児の父として子供と外出する日々。

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