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【読者企画】猪瀬直樹さんに聞く -大阪を取り戻す-

民都とは

小室:本日はお時間を取って頂き、誠にありがとうございます。(筆者補足:この日、第2回副首都推進本部会議が開催されていた)

 まず猪瀬さんが考えておられる副首都の概念について教えて下さい。

猪瀬:元々は東京で災害等が起きた際のバックアップとして議論がなされてきました。私が唱える民都はそうではなく、大阪の歴史に合ったものにしようというものです。

小室:「民都」ですか。

猪瀬:そうです。東京は行政機関の中枢が存在する「官都」です。江戸時代の初めに将軍が居を構えた頃からその機能を果たしてきました。一方、大阪は経済が重視され、自由闊達な発想から新しいビジネスが生まれ、さらに民間がボランティアや寄付でインフラを整備してきた歴史があります。古くを紐とくと淀屋橋や道頓堀は寄付で、大阪城はクラウドファンディングで出来たようなものです。また江戸時代には堂島の米会所では世界初の先物取引をしていました。取引を行うためには最新の情報が必要ということでマスメディアの基礎ができた。朝日新聞、毎日新聞、産経新聞いずれも大阪が発祥の地です。まさに市場社会として世界最先端のものが大阪にはあった訳です。

 そうした大阪にある気風や文化を活かせる官公庁を大阪に設置しようということです。

小室:新しい省庁を作るのですか。

猪瀬:官公庁を肥大化させることは考えていません。公益庁という官庁を想定していますが、それは内閣府の大臣官房公益法人行政担当室・公益認定等委員会など既存の組織を集約し大阪に移転していただくというものです。

小室:海外でそのような官公庁は存在するのでしょうか。

猪瀬:英国にOffice for Civil Societyという組織があります。キャメロン政権のBig Societyの中核であり、所掌範囲はcharities(日本の公益法人・学校法人・社会福祉法人・社会医療法人・更生保護法人・認定NPO法人等に相当)、social enterprises(社会事業体=日本の公益法人・一般社団財団法人・NPO法人・協同組合・一部の株式会社や合同会社等)、そしてvoluntary organisations(公益法人・一般社団財団法人・NPO法人等)になります。

 日本で財団法人や社団法人はこれまで官僚の天下り先になっていましたが、近年、これを改め認可をやり直し、公益性を有すると認められた公益法人が新たに9,000ほど生まれました。これらを所管する官庁を公益庁として創設することを考えています。

小室:なるほど。それにしてもなぜ大阪の行政から「民都」らしさがなくなってしまったのでしょうか。

猪瀬:1970年代から革新勢力による社会党、共産党の大阪府政が続き、社会主義のような政治運営をしてしまったのが災いしたと考えています。それで先端の金融市場が逃げて行った。東京が吸引したのではなく社会主義的な大阪から逃げて行ったようなものだと考えています。それこそベルリンの壁が大阪に出来たかのようなものです。それをここ最近になって橋下さんたちがようやく崩してきました。まさにこれからです。

小室:民都の機能はどのくらいの経済規模があるのでしょうか。

猪瀬:日本のGDP約500兆円のうち、NPO・公益法人・学校法人・医療法人・宗教法人など軽減税率のエリア(筆者補足:税制面で優遇されているという意味)で約35兆円を生み出しています。政府でも民間でもない第三の道、フィランソロピーは世界では大きな潮流になっています。それを活かさない手はないと思います。

 

メディアの活用とイベント誘致

小室:本日の会議の中では、経済活性化のために大阪に大規模なイベントを誘致しようとしてもなかなかうまくいかないという話が出ていました。たとえばファッションイベントにおいて主催者や参加者の予算は、大阪:東京:パリで1:10:100になってしまう、大阪だとマスメディアが注目してくれないから少額になる。よって主催者に断られてしまう。また大阪府など行政が確保する予算が東京都に比べてあまりないという話もありました。

猪瀬:メディアが大きく変わっていることにもっと着目すべきですね。それこそ橋下さんはtwitterで次々発信していました。同じようにどんどん発信すればいいと思います。

 今はSNSの時代です。それこそNewsPicksのようなメディアに積極的に載せてもらえるように工夫すべきです。新聞は購読部数が減り、TVは視聴時間を減らしています。一方で人々はスマホの画面をよく見ていることを考えた方がいいと思います。費用をあまりかけなくても創意工夫により人々が賛同しイベントに人が来やすくなっていると思います。

小室:何か大阪に誘致するといいイベントはありますでしょうか。

猪瀬:今日の会議では闘会議を紹介しました。闘会議2016(開催:1月30日・31日)の総来場者数は会場来場者が4万7,588人、ネット来場者数687万8,290人だったそうです。昨年度より大幅に伸びています。

 これやe-Sportsといった、インターネット技術を活かしたイベントを誘致するといいと思いますね。

小室:さらに民間の活力を活かすということで2025年の万博誘致を提唱していますね。

猪瀬:日本が最先端の高齢化社会・長寿社会を迎えていることから、それに即した技術をポジティブに発信すればいいですね。コンセプトとして「人類の長寿と調和」「楽しいエージレス社会」「介護ロボット」「先端医療」「ライフサイエンス」「ボランティアの定着」などが考えられます。

 2005年の愛・地球博(愛知万博)はトヨタ自動車さんなどの協力があって成り立ったと言われているのと似たように、2025年の大阪万博も関西の企業に協力していただいて開催できれば、必ずや沢山の方が来て注目を集めることにより、関係する企業は元が取れるであろうと考えています。

 ここで気になるのが立候補をめぐる動向です。2025年分は今年の4月1日から立候補を受け付ける予定になっており、フランス(パリ)が名乗り出そうと言われています。万博は一都市が立候補するとその半年後に立候補が締め切られます。そうなると9月末までに立候補する体制を整える必要があります。そして万博は都市でなく国が誘致することになっているので大阪府・大阪市の意思決定だけではなく政府の閣議決定も必要です。それが出来るよう関係者間を調整する必要があります。

 一方でパリは2024年の五輪をも招致することに既にしており、この開催地が決まるのは2017年9月の予定です。一方で2025年万博の開催地が決まるのは2018年11月の見込み。パリが両方を招致するのは難しいと考えられるため、今後の五輪招致は特に注目すべきだと考えています。

 

今後の予定

小室:今後の副首都構想に関する検討のスケジュールはどうなっていますでしょうか。

猪瀬:今日出席した会議の事務局によると、今年の9月までに副首都の概念・必要性・求められる機能について中間整理を行い、来年2月頃までに中長期的な取りまとめを行うようです。

小室:本日はいろいろと説明していただき、誠にありがとうございました。

 

参考

NewsPicks過去掲載記事
 2015年12月28日「大阪を副首都に」推進本部が初会合…猪瀬直樹氏「公益庁」創設を提案

大阪府 副首都推進本部
 これまでの会議の概要が掲載されています。大阪市にも同様の内容のWebページがあります。

関西広域連合 首都機能バックアップ
 これまで議論された取組についてまとめてあります。なお、関西広域連合は滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県・鳥取県・徳島県・京都市・大阪市・堺市・神戸市(平成27年12月4日現在)で構成されています。

Office for Civil Society 公式ブログ
 英文で記されています。

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プロフィール

小室

小室 勝裕
1972年生まれ。京都市在住。
10年来、購買業務のうち間接材の取引見直しによるコスト削減を様々な立場で経験。コンサルテイング会社勤務時代には事業を西日本に拡大するに当たっての現場の最前線を背負う。事業企画、経営企画、そして内閣府に出向して国の制度改革にも貢献した後、製薬会社に転職、現在に至る。
週末は二児の父として子供と外出する日々。

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